お化粧と私
お化粧と私
幼い頃から鏡は、私にとって特別な存在だった。そこには、日に日に変化していく私の姿が
映し出されていた。丸々とした赤ちゃんの頃、ふっくらとした幼児の頃、そして、やがて大人へと近づいていく私の姿。鏡の中の私は、いつも私を照らし、励ましていた。
思春期を迎えると、鏡に対する意識は変わった。鏡の中の私は、もはやただの姿ではなく、周りの評価を映し出す鏡となった。クラスメイトの誰かの言葉、雑誌のモデル、SNSの美しさ、それらすべてが私の心に影を落とす。私は、鏡の中の自分を変えたくて、必死に化粧を始めた。
最初は下手で、顔全体が汚れてしまうこともあった。それでも、鏡の中の私は、少しだけ大人に近づいたように思えた。化粧は、私にとって魔法のようなものだった。自信がなかった私は、化粧をすることで、少しだけ勇気を出すことができた。
高校時代、私は化粧研究に没頭した。様々なコスメを試しては、自分に似合うものを探し求めた。雑誌やインターネットでメイクテクニックを学び、何度も練習を繰り返した。次第に、私は化粧をするのが楽しくなり、鏡を見るのが楽しみになった。
大学に入ると、私は化粧なしでは外出できなくなった。すっぴんの自分は、自信がない。周りの目を気にして、いつも完璧なメイクを心がけていた。しかし、その完璧なメイクは、私を縛り付けていた。
ある日、友人に「いつも同じメイクだね」と言われた。その言葉に、私はハッと気づいた。私は、鏡の中の理想の自分に縛られて、本当の自分を見失っていたのだ。
私は、化粧をやめる決意をした。最初は、鏡を見るのが怖かった。すっぴんの自分は、自信がなくて、鏡から目をそらしてしまうこともあった。しかし、徐々に、鏡の中の自分を受け入れることができるようになってきた。
化粧をやめて、私は、もっと自分自身と向き合うことができるようになった。自分の好きな服を着て、好きな音楽を聴いて、好きなことをして。素顔の私は、思っていたよりもずっと輝いていた。
化粧をやめた今でも、私は化粧が好きだ。化粧は、私にとって自己表現の手段の一つであり、自分を高めるためのツールでもある。しかし、私は、化粧に振り回されることなく、自分らしく生きることを大切にしたい。
鏡の中の私は、もう一つの私ではない。鏡の中の私は、今の私がどう映っているか、そして、どうありたいかを教えてくれる存在だ。私は、鏡の中の私と対話し、自分自身を深く理解していく。
化粧は、私の一部になった。しかし、化粧は、私全てではない。私は、化粧をした私、そして、化粧をしていない私、どちらも私なのだ。
私は、これからも鏡に向かって、自分自身と対話し続けるだろう。そして、鏡の中の私と本当の私が一つになる時、私は、もっと自由で、もっと輝くことができるだろう。
化粧と私、このテーマは、きっと永遠に私の心を揺さぶり続けるだろう。それは、私が生きている限り、自分自身を探し続けるということ。そして、自分自身を愛し続けるということ。
私は、これからも様々な経験をして、様々な変化を遂げるだろう。その度に、鏡の中の私は、新しい姿を見せてくれるだろう。私は、その変化を楽しみにしながら、自分自身を成長させていきたい。
社会人になり、化粧に対する考え方はさらに変化した。もはや、流行を追うだけでなく、TPOに合わせたメイク、そして、自分の個性を際立たせるメイクへと関心が移っていく。オフィスではシックで落ち着いた印象に、友人との食事会では華やかなメイクと、その日の気分や場所によってメイクを使い分けるようになった。
同時に、スキンケアの重要性も痛感する。化粧品だけでなく、食生活や睡眠など、美しさは内側から生まれるものだと実感し、美容に関する知識を深めていった。
結婚を機に、化粧に対する価値観は大きく変わった。自分だけでなく、パートナーへの気遣いも込めて、優しい印象を与えるメイクを心がけるようになった。また、出産を経験し、子育てに追われる日々の中で、手軽にできるナチュラルメイクの重要性を実感する。
アラサーになり、肌の悩みは深まる一方。シワ、くすみ、乾燥…鏡を見るたびにため息が出てしまう。それでも、諦めずに様々な美容法を試す中で、年齢を重ねるごとに、より自分らしい美しさを追求するようになった。
40代になり、化粧はもはや外見を飾るためのものだけではないと気づいた。化粧をすることは、自分と向き合う時間であり、心を穏やかにする時間でもある。鏡を見る度に、今日の自分はどんな気持ちだろうかと自問自答し、内面と外見のバランスを意識するようになった。
ある日、偶然立ち寄ったデパートで、メイクアップアーティストと出会う。プロの視点から、私の肌質や骨格に合ったメイクをしてもらい、今まで知らなかった自分の魅力を発見する。その経験は、私にとって大きな転機となり、自分だけのメイクアップスタイルを確立するきっかけとなった。
年齢を重ねるごとに、化粧の持つ力は変化していく。若い頃は自己肯定感を高めるために化粧をしていたが、今は自分を楽しむためのツールとなっている。化粧をすることで、気分転換になったり、自信が湧いたりする。それは、まるで自分へのご褒美のようなものだ。
様々な経験を経て、私は気づいた。美しさとは、外見だけでなく、内面も含まれるものだということを。年齢を重ねるごとに、外見は変化する。しかし、内面の美しさは、年齢を重ねるごとに深みを増していく。
50代になり、私は、これまでの人生で出会った様々な人々や経験に感謝している。そして、これからも、自分らしく生きていきたいと思っている。
化粧と私、このテーマは、私の人生において、永遠のテーマであり続けるだろう。それは、私が生きている限り、自分自身を探し続け、自分自身を愛し続けるということ。
人生の後半戦を迎え、私は、新たな章をスタートさせた。それは、より自分らしく、そして、より美しく生きるための新たな章だ。
化粧と私という名の物語は、まだ終わっていない。この物語は、私が生きている限り、永遠に続いていく。